子どもに障害について伝えた方がいいの?A君の事例を通して

お子様の障害について、保護者から、
「子どもに伝えた方がいいんでしょうか?」と相談されることがしばしばあります。

私が感じるのは、本人の受容できる発達段階と心の状況、本人がその障害によって、現在困っているのか、社会的につらい思いをしているのか、その障害が壁になっているのか、本人が自分自身の事についてどのように感じているのか
等を十分に把握した上で、ご家族や、Dr、関係機関と連携を取りながら判断します。
なぜなら、本人を守れるサポートが出来ないと本人にとって不安しか残らないからです。

なぜそのように感じるか、私の教え子の事例をご紹介させてください。


教え子にA君という子がいました。

その子は、高機能自閉症、広汎性発達障害と診断を受けています。

今は高校生ですが、その子は
小学校一年生の頃からの付き合いです。

デイサービスで管理者をしていた私は、週一度訪れるそのA君を毎週どうしたものか、、、と正直頭を抱えておりました。

というのも、そのA君は一言で言えば、



と言った所でしょうか、、、笑笑


施設に到着すると、棚は全てひっくり返す。
お友だちには興奮して突き飛ばす。
正論をまくしたてる。
他の障害について否定したり、馬鹿にし傷をつけてしまう
「この中に障害の人はいますか?障害の人はできませんからご遠慮ください」
「言葉がしゃべれない人は無理です」なんて事も言いました。
(子どもの世界は思っているより残酷なんです)

という感じでした。

ソーシャルスキルトレーニングをしたり、話を聞いたり、危ない時には身体を張って制止したり、様々な事を行いました。


話を聞く中で分かった事は

◯本当は仲良くしたい、上手くやりたい
◯とにかく色んな事が気になる、知りたい
◯僕の事を理解して欲しい

という事でした。
A君は私に色んな事を教えてくれました。

そんなA君、転機がおとずれたのは、

小学3年生の頃でした。


特別支援級の前の本棚にあった、発達障害という本を手に取りました。



、、、正直、施設に来たA君は恐ろしい状況でした。

一年生から信頼関係を積み上げてようやく話ができる状況までになっていたA君は一気に崩壊したように見えました。


お母さんからは、
『先生!うちの子学校でなにかあったんです。話をしてくれないんです。助けてください』

という旨のSOSがありました。


泣きながら大暴れするA君の手を取り
※抑え、、、でしょうか。←保護者に確認、安全確保の為ですよ


ゆっくり背中をさすって
『貴方の味方やから、一緒に辛いのを乗り越えていくから、何があったのか教えてくれる?』


と時間をかけて伝えました。

ポツリポツリとA君からの返答がありました。


『先生、僕死ぬんやろ?』

私『?』


、、、ようやく理解できました。

学校の教室の前にあった本に、発達障害の事が書いてありましたが、

その本を読んで、

(これ、僕やん!!)

って思ったそうです。

でも、そこには、どうしたらいいかが書いてなかった、、、との事。

僕は発達障害だ!→病院や施設に行っているのは不治の病→僕死ぬやん!!


という発想で自暴自棄になっていたそうです。全て理解した上で私は
『ホンマか〜辛かったなぁ。でも、発達障害が原因で死なんで?』と言うと、A君はキョトン。笑笑

障害受容されている有名人や、選手、の発達障害の方の大人の方の話をしながら、
皆んなそれぞれ違いがある事、障害は病気じゃない事、違いはおかしい事じゃない事。
僕にしか出来ない素敵な力が備わっている事


余談ですが、私はいつも基本冗談を言っています。大事な物をよく無くします。感動したらすぐ泣きます。
子どもにすぐ、『ごめーん!私やわ!ごめんね〜』と謝ります。『はい。天才!』とすぐ褒めます。←あっ自分自身でも笑笑。

子どもたちにとっても、私は変わっているんでしょうね笑笑
大なり小なり、自分自身も含めみんないろんなものがあります。だからこそ、きっと人に優しくなれたり、人の痛みに共感したり出来るものです。

A君は私を『おかしいなぁ笑笑』と言っています。
初めはふざけた事しないで!と怒りましたが、慣れたようです。笑笑


学校や施設では診断する場所ではないので、貴方は発達障害ですよ。なんて言う事なんて、絶対にありません。
でも、自分の事を真剣に悩んでいるA君に障害じゃないよ。とも言いませんでした。


『そんな風に感じたんだね。でも、A君はA君だよ。
大人も子どもも色々悩んで、乗り越えて行くし、貴方がその事に対して苦労して乗り越えたぶん、誰より優しくなるよ。貴方の力が、必要やで。悩んで乗り越えて、みんなの味方になってよ。つらかったんだね。教えてくれてありがとう。』という旨を伝えました。

『私もこんなんでも、こんな風に大人で生活出来てるやろ?』

と言うと

『そうですね』

、、、おい。どう言うこっちゃ笑笑。


また、自分が感じた障害については、困っていない時に、あちこちでみんなに言う必要はないということ。
◯『この中で障害の子はご遠慮ください〜』なんてA君が以前は皆んなの前で言っていた経験より
自分の情報は個人情報、カードなど暗証番号など、人に言わないのと同じで、みんなに言う必要はないと伝えました。
(Drや信頼できる親は別。困ったときに助けてくれる人に自分が必要だと感じたら考えたらいいということも含む)


話終えるとホッとして笑顔がもどり、周囲に対してすごく優しくなったA君。
A君エピソードはまだまだあります。

『MIYUさんおって良かった。』と両目に涙をためながら言いました。
不完全な大人の存在って大事かもしれませんね

こんな小さい身体でこんな思いを抱えてたのか…私自身もすごく心が張り裂けそうでした。
きちんと話して向き合わなければきっと、彼がなぜこんなに荒れたのか分からなかったでしょう。



お母さんも『凄く考えさせられました。本当にありがとうございます』と言っておられました。

この仕事をしていて思う事は、
障害受容が大きく取り上げられる一方で、
本人のデリケートな気持ちのフォローが出来ぬまま、心を閉ざしてしまったり、

ネットなどで調べて誤った情報を知り、酷く落ち込んでしまったり、

障害の名前だけが一人歩きしていて、
障害の◯◯君って看板を大きく背負って生きる事は
その子にとって、どのように感じ、どのように向き合っていくのでしょうか、、。

個人的な意見としては障害啓発ポスターは内容にもよりますが、好きになれません。

→短い文面の中で色んな解釈ができ過ぎるデメリットが多すぎるように私は感じます。

障害って、
社会に生きて行く上で障があるから障害であって、
その子が社会で笑顔になれる生き方ができるなら
ノン障害なんですよね。



最初にも書きましたが、決して診断を受けるのを反対しているのではなく、
親御さんが正しく理解した事を、本人に伝えるにしても、
本人が受け止められる精神年齢、発達
心、周囲のフォロー、ドクター
等子ども自身がSOSを出せる場を必ずつくってあげてほしいです。

どんどんA君は、今では専門分野の道に進み、大会で賞を取るなど自身に満ち溢れた素敵な人になっています。
また、どこかでお伝えできればと思います。前に進む力を応援してあげたいと思います


 
 

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感想(3件)



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小学3年生で障害受容したA君のその後~B君は僕が守る~

自分が発達障害だと気付いたA君。劇的にその日を受け入れ変化していくA君。
それでも、毎回来所する度には、イライラすると、大声で騒ぎ他児とのトラブルがありました。


そんなA君の成長をつづっていきたいと思います。

施設には、難聴、ダウン症のB君が来ていました。A君より1つ下です。


その子が、本当によくつねりました。
というのも、その子には言語がなく、
ご家族の方針もあり、施設でできる事を考え
日常会話くらいの簡単な手話を子どもたちも含めて日常的に伝えて行きました。

↑こんなイラストを描いて皆でお勉強しました。
しかし、元気いっぱいのB君は力加減が、難しく、言葉も伝わらないため、お友だちを押したり突き飛ばしたり、、、
毎回正義感の強いAくんは、

怒る怒る😤笑笑

『そんなんあかんやろ!』

と言って突き飛ばす、、、、。

、、、一緒やん。苦笑


そんなこんなで、犬猿の二人でしたが、

B️君の行動はエスカレートしていきました。
周囲の子どもたちも、
『B️めっちゃつねるから嫌や。』
『B️わかってやってるで。』
『つねるから無視!』
なんて、子どもたちからその様な言葉も聞かれました。



保護者に理解をしていただき、みんなで会議をしました。
Bくんにされたことで、皆んなが辛かったこと。
B️くんはどうしてつねるのか?
など話し合いました。

そこで、
『B️は痛い事してくるから仲間じゃないよ。』
『B️はつねった後、僕が怒ると笑った!💢』
など、思い思い子どもたちから出てきました。

『それは辛かったね。でもどうしてB️はつねったと思う?』

と聞くと、
うーん。
と子どもたちが考えます。

『あかん事やってるBが悪いやん!』という嫌な雰囲気の中、、、

『きっと僕らが、知らん顔してたから、やったんちゃう?』
と一人の子が言いました。

すると、
『そうか。無視してて、B️の方向いたから嬉しくて笑ったんかな?』


と耳の聞こえないBの気持ちを皆んなが代弁するようになりました。

何度か、耳の聞こえない子の気持ちがわかるように、遊びで、喋ってはいけないゲームやジェスチャーゲームなど、施設では行い、気持ちが伝わらないもどかしさを子どもたちは知っています。

『でもつねられるん嫌や』
という雰囲気を一変してくれたのは

犬猿の仲のA君でした。

『僕はBの気持ちが分かります。僕も手を出したくなくても出てしまう事があったから!僕がBを守ります。』

と断言。

『そやな。無視したから私たちも悪かったよね』
『もう。つねんなよ。わかったから』なんてBに向いて口々に子どもたちはいいました。


A君の一言で皆んなの気持ちを一瞬で変えてしまいました。

本当に凄い子だと思います。



話は変わりますが、そんなA君は
他にも『笑わないで、相談に乗ってください!学校で友だちが『A君、ち◯こ』ってからかってきます。(お下品ですが…)

どうやったら僕は我慢ができるようになりますか?


と聞いてきました。

A君は、人を変えるのではなく、自分がどうやったら乗り越えられるかを聞いてきました。

このA君が、苦労して乗り越えていく気持ちがB君を救ったのだと思いました。

周りの理解のおかげか、
B君は徐々につねる事が減っていきました(^^)

色んな気持ちを経験して、人の痛みや辛さを感じて助け合える子どもの素晴らしさを知っていただきたく、ブログに致しました。

ひょっとしたら、B君の気持ちはみんなが想像していたこととは違うのかもしれません。
でも、人の気持ちを想像したり、自分だったらどうかをみんなで考えたり、その様な経験が誰かを大切に思う経験として積み重なっていくのではないでしょうか。

苦労したり、辛かったり、躓いたり、失敗したり、、、そんな事が、乗り越えた時に自分だけでなく、人の気持ちを救う力になると私は思っています。

きっと無駄な事は何一つないですね😊
今日のつらかったことは、明日誰かの力になる。だから励ましあって生きていくことが大切であると思います。

皆、仲間。皆で乗り越えよう!という結束が出来たら子どもは強いです。